紳士用の財布や手帳などの素材としてよく見かける「ブライドルレザー」。締まりのある堅さと、蝋が塗られた特有の表情は、男性の渋さを引き出します。この革は元々、英国で馬具用に使われていました。戦争や産業の発展により乗馬が盛んになった中世において、優れた馬具が必要になり開発されたと考えられています。「ブライドル」の英語表記は「bridle」。馬鞍や手綱などの馬具全般の総称のことを指します。すぐに壊れてしまうと落馬や怪我をしかねない馬具は、何よりも強靭さと耐久性が必要。そこで使われるようになったのが「ブライドルレザー」なのです。
銀面が主役の加工
革の表と裏はそれぞれ「銀面」「床面」と呼ばれます。銀面とは、動物の体の表面部分であったほうの面をいい、その動物特有のシボ(革の表面にあるシワ模様)や傷跡など、革の個性が表れやすい面です。もう一方の体の内側部分であった面を床面と呼び、こちらは主に毛羽立った面になっています。一般的には銀面が表、床面が裏として扱われています。
- 1.ヌメ革
植物タンニンでなめし、型押しや染色などの表面加工をほとんど施していない革です。革の個性となる傷跡やしわが表れるので、素朴でありながら風格のある仕上がりになります。加工されていない分傷がつきやすいですが、それも含めて革本来の味わいが出るエイジングが楽しめます。ヌメ革の中にはさらに、丈夫さを求めた「サドルレザー」、カービングに向いた「タンロー」などの種類があります。 - 2.オイルドレザー
革をなめす時もしくはなめした後に、オイルを染み込ませた革。オイルによって柔らかくなり、耐久性が増しますが、染色などの加工はされないため革本来の風合いを楽しめます。エイジングによって含まれたオイルが滲み出すので、汚れやすいデメリットはありますが、独特の味わいが出てきます。 - 3.シュリンクレザー
シュリンクとは細かな縮みじわを作る加工のこと。シュリンクレザーは、革をなめす際に専用の薬品を使い、銀面を縮ませることによって完成します。革の個性であるシボがより際立ち、使い込みによるシボの伸びが起こりにくいメリットがあります。 - 4.アニリンレザー
表皮を削らず、毛穴やしわといった革の個性をそのままに染色した革に、アニリン染料という合成染料を用いて仕上げたもの。染料のみで表面加工をしていない分、水や汗に弱くシミになりやすいですが、上品な艶と透明感があります。 - 5.ブライドルレザー
なめした後、複数回にわたってロウを塗りこんだ革。イギリスが起源とされる革で、繊維の引き締まった硬い手触りが特徴です。ロウが浮き出てくるため、新しい革は白い粉が吹いたようなものもありますが、使い込むうちに独特の深い光沢が表れてきます。 - 6.型押し革
革を仕上げた後にプレスして加熱・圧縮し、独自の表現をつけた型を押し付けて仕上げた革です。クロコダイルや蛇などの模様が多いです。細かな傷に強くなり、質量のあるむちっとした仕上がりになります。
光沢加工
つるりとした仕上がりで、強い光沢が魅力の加工法です。樹脂が被膜となるので、他の加工法に比べて耐水性が強いことも共通した特徴です。指紋や汚れが付着しやすい傾向がありますが、多くは乾いた布でサッと拭くのみで対応できるので、マメなケアをしてあげるとキレイな状態を長く保てます。靴の場合は履きジワが刻まれやすい特徴があります。
- 1.パテントレザー(エナメル革)
なめした後の銀面にウレタン樹脂でコーティングして仕上げた革。銀面に被膜が張られるため耐水性が強まり、光るような光沢が生まれます。ガラスレザーよりも柔らかく仕上がります。 - 2.ガラスレザー
なめした後の銀面に、アクリル板などのガラスを貼り付け、乾燥後に顔料と合成樹脂で磨いた革。内部にガラスが入っている分、クリームなどは浸透せずお手入れはしづらいですが、比較的安価な傾向にあります。
起毛加工
ふわっと毛羽立ったような仕上がりの加工法で、独特の光沢と柔らかい手触りが特徴です。
- 1.スウェード
スウェーデン発祥の加工法で、革の床面をやすりやサンドペーパーで細かく毛羽立てた革。 - 2.ヌバック
一見スウェードと似ていますが、ヌバックは革の銀面を毛羽立てて加工したものを指します。スウェードよりさらに毛足が短い仕上がりになります。 - 3.ベロア
成牛などの大動物の革の床面を毛羽立てた革。過程はスウェードと似ていますが、大動物の革ということでスウェードに比べて毛足が長い仕上がりになります。
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